課題解決事例

マスバランス方式で「品質を変えない」環境対応

金型を変えずに40%ものバイオマス化を達成したシグマの決断

株式会社シグマ 開発本部
坂 良昭様


光学機器のグローバルブランドとして知られる株式会社シグマでは、企業の社会的責任として環境負荷低減への取り組みを加速させています。梱包材の脱プラスチック化などが進む一方で、製品本体への環境素材導入には、技術的に高い障壁が立ちはだかっていました。

課題:環境対応で直面した、「品質維持」と「環境素材採用」のジレンマ

株式会社シグマは、交換レンズやデジタルカメラの製造・販売を行う光学機器メーカーです。福島県の自社会津工場を中核に、東北を中心としたコンパクトなサプライチェーンによる国内一貫生産体制を構築し、世界最高水準の性能と品質を維持し続けています。

同社では2025年のビジュアルアイデンティティ(VI)刷新に向けた準備と時を同じくして、2023年頃から全社的に環境負荷低減への取り組みを加速させていました。梱包材の脱プラなどが進む中、製品開発部門としても「製品そのものに環境素材を取り入れられないか」という検討が始まりました。当初、候補に挙がったのはプラスチックのリサイクル材でした。しかし、そこには光学機器メーカーならではの高いハードルが存在しました。


「開発として環境配慮のためにできることは、やはり材料の転換です。当初はリサイクル材の使用を検討しましたが、最大の課題は『精度』でした。私たちが作る交換レンズの部品は、ミクロン単位の非常に高い精度が要求されます。リサイクル材はロットごとの物性にバラつきが出やすく、また既存の材料とは収縮率などが異なるため、同じ金型を使うことができません。金型をリサイクル材専用に作り直し・調整しなければならず、そこまでのコストとリスクを負ってまで踏み切れるものではありませんでした」(坂氏)

また、自動車業界などを中心にリサイクル材の需要が高まる中、自動車業界に比べて生産規模の大きくない同社にとって、将来的に材料が確保できなくなる「供給不足」のリスクも懸念事項でした。

「もしリサイクル材に合わせて金型を作り直したとして、突然『来月から材料が入ってきません』となってしまえば、生産が止まり、会社として一番の打撃になります。コストが上がる上にリスクも増大してしまう。技術的な観点からも、リサイクル材への全面的な切り替えは難しいと判断せざるを得ませんでした」(坂氏)

環境対応は進めたいが、「精度」と「材料の安定調達」は絶対に妥協できない。このジレンマの中で、同社は解決策を模索していました。

課題のポイント
  • 工業製品の製造を担うメーカーの責任として、製品そのものへの環境配慮を模索していた
  • 高精度な部品が求められる交換レンズにおいて、リサイクル材は物性のバラつきや金型の作り直しが必要となることが課題だった
  • リサイクル材には供給不足のリスクもあり、安定生産への懸念があった