課題解決事例

マスバランス方式で「品質を変えない」環境対応

金型を変えずに40%ものバイオマス化を達成したシグマの決断

株式会社シグマ 開発本部
坂 良昭様

解決:「マスバランス方式」によるバイオマス樹脂の採用により、金型を変えずに鏡筒の素材を切り替え

解決のポイント
  • バイオマス材は、従来品と同等の物性を持つため、既存の金型をそのまま使用可能。スムーズな切り替えを実現した
  • ISCC PLUS認証に基づいた「マスバランス方式」により、環境価値を製品に付与
  • 主力材料であるガラス繊維強化ポリカーボネートを切り替えることで、大きな環境インパクトを創出

この課題を解決したソリューション・製品

ソリューションのご紹介

先述の課題に対し、帝人が提案したのが「マスバランス方式」によるバイオマスポリカーボネート樹脂でした。これは、原料から製品への加工・流通工程において、バイオマス由来の原料と石油由来の原料を混合させ、投入したバイオマス原料の割合に応じて、製品の一部に環境価値を割り当てる手法です(ISCC PLUS認証準拠)。最大の特徴は、最終製品の物理的・化学的性質が、従来の石油由来製品と同等であることです。

「最初に説明を聞いた時は、マスバランスという概念を理解するのが難しかったのですが、理屈がわかれば非常に合理的でした。原料が科学的に同じであれば、どこの砂糖や塩を使っても料理の味が変わらないのと同じで、出来上がる樹脂の物性は変わりません。つまり、『金型を変えなくていい』のです。精度を一切犠牲にせず、すぐに環境素材へ切り替えられ、且つ、仮にバイオマス材が納入できなくなっても、通常の材料に戻す事ができる。これこそが開発者としての採用の決め手でした」(坂氏)

シグマが採用したのは、寸法安定性と剛性に優れたガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂に、バイオマス原料を適用したものです。特にレンズを支える鏡筒などの部品において、樹脂の異方性(成形時の収縮率が方向によって異なる性質)が少ないことは、レンズの光軸精度を保つための生命線となります。

「もともと弊社で採用している帝人さんの材料は異方性が少なく、品質が安定しているため長年信頼して使っていました。検討当時、我々が求める高い精度基準を満たしつつ、マスバランス方式でバイオマス化できる選択肢を持っていたのは帝人さんだけでした。技術的な信頼と、環境対応への提案力が揃っていたことが大きかったです」(坂氏)

この採用は、環境に対して非常に大きなインパクトをもたらしました。同社は、製品の中で最も使用量が多い主力素材をあえてターゲットにし、使用するプラスチック部品全体の約40%を一挙にバイオマス素材へ置き換えることに成功しました。

「どうせやるなら使用量が多く、かつ高機能な部品の材料を替える方が環境へのインパクトも大きいと考えました。これほど高精度な部品において、材料を切り替えても製造現場で『変化がない』というのは画期的なことです。導入にあたってはサプライヤー側のISCC PLUS認証取得なども必要でしたが、帝人さんの手厚いサポートもあり、検討開始から採用まで非常にスピーディーに進めることができました」(坂氏)

こうした技術的な裏付けもあり、経営トップが迅速な意思決定を行い、早期の採用が実現。欧州市場をはじめとするグローバルな環境意識の高まりに対し、シグマは「高品質」と「環境配慮」を両立させた製品で応えています。

「10年前、20年前であれば採用は難しかったかもしれませんが、今は社会全体が変わらなければならない時期です。高い精度を求める我々のようなメーカーにとって、マスバランス方式のバイオマス材は最適な解決策だと感じています。おそらく今後、同業他社さんも環境素材の使用を考えた場合は必ずバイオマス材に行き着くはずです。弊社が先陣を切って実績を作ったことで、この選択肢が業界全体に広がっていくことを期待しています」(坂氏)

製品の精度を維持したまま、環境価値を実装する――。シグマのこの決断は、品質を追求する製造業にとって、一つの道標となるはずです。
帝人は、高機能な素材が求められる産業においてもサステナビリティに貢献できるよう、確かな素材技術とソリューションで、お客様の環境戦略をサポートしてまいります。

Profile

株式会社シグマ

©SS 島尾望

1961年創業の光学機器メーカー。デジタルカメラ、交換レンズ、シネマレンズ等の製造・販売を行う。福島県会津工場での一貫生産体制「Made in Aizu, Japan」にこだわり、設計から製造、金型に至るまで自社で完結させる高い技術力を持つ。世界85カ国以上で事業を展開し、プロフェッショナルから愛好家まで幅広い支持を集めている。

坂 良昭(さか よしあき)氏

株式会社シグマ 開発本部 開発第2部 第4課 課長
2007年入社。以来、交換レンズの機構設計(メカ設計)を一貫して担当。「Sigma 24-70mm F2.8 DG DN | Art」や「Sigma 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary」など、同社を代表する数多くの主力製品開発に携わる。現在は課長として、交換レンズのメカ設計チームのマネジメントおよび開発プロジェクトにおける、技術と品質の責任者を務める。

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